19世紀後半パリ万博にペルシャ絨毯が出品されヨーロッパでの需要が爆発的に高まりタブリーズ商人によりペルシャ中の絨毯が集められて欧州へ輸出されたと言われています。需要に追い付かず19世紀末から20世紀に掛けて欧米の企業が自らヨーロッパ向けの絨毯工房のパトロンとなりタブリーズの旧市街やマララン(アルメニア人地区)などで運営に乗り出します。20世紀の初め半世紀足らずの短い期間ですが、タブリーズに高級絨毯工房として確固たる足跡を残し現在もコレクター垂涎の工房が、二つ有ります。どちらも欧州の富裕層向けの高級で大きな作品が多く現在骨董的価値も加わり高額で取引されています。
一つがアルメニア系英国企業ベンリアン(Benlian)工房で もう一つがドイツ企業によるぺタグ( Petag)工房です。
ベンリアンの作品は伝統のサファビー朝由来のデザインや色を欧州好みに刷新したもので有り、アーツ&クラフツの精神クラシック・モダンと符合します。対してぺタグ社の作品はⅤ&Aのアルデビル絨毯の忠実な再現に代表されるように重厚なサファビー朝宮廷絨毯のデザイン・染色・技術の完全復刻が特徴です。その企業活動の根底にはオリエンタルラグの求道者ハインリヒ・ヤコビー(1889–1964)による芸術絨毯の保護・復興・継承と言う理念あります。
ベンリアンはベージュやピーコックブルーと呼ばれる明るい色調と内側ガードボーダーの角に八角星のカルトゥーシュ(benlian star)が織り込まれている事で識別出来ます。
ぺタグは PETAG のアルファベットやチンタマニ文様の隠しサインの織り込みで確実に判別できます。

英国オークションハウス・ライオン&ターンブル ベンリアン工房の絨毯 左下にベンリアン・スターが見えます。

benlian


八角星のカルトゥーシュ benlian tabriz

benlian

PETAG Hamajon around 1920 1930, wool on cotton 336 x 243

Petag around 1910^1920 wool on cotton 346 x 242

ぺタグのチンタマニ文様
*チンタマニ文様 元はサンスクリットのチンタ(考え)とマニ(珠)で願いをかなえる宝珠と言う意味。目玉を三角に並べた様な文様ですが、オスマンに伝わり三宝珠の吉祥紋として刺繍・絨毯・タイルなど工芸品に使われています。

お使い下さい‼手織り絨毯
フロムギャッベ
*アルメニア系商人は古くよりシルクロード貿易の担い手であり、19〜20世紀初頭のタブリーズ絨毯産業を主導しました。多言語を操りイギリス・イスタンブール・タブリーズ・トビリシ・バクー・ロシア・ハンブルグと言ったアルメニア人の国際ネットワークを持ち、工房への出資(patron)、デザイン革新、欧州市場への輸出を担い、タブリーズを世界的な絨毯生産地とする原動力となりました。
*ベンリアンはトルコ生まれのアルメニア系英国人エドワード・E・ベンリアン(1972年没)によってタブリーズのマラランに開かれました。彼はロンドンの絨毯商人の父から幼くして事業を引き継ぎ絨毯貿易により莫大な富を築きますが、死後全財産はベンリアン財団に寄付されアルメニア・コミュニティーに貢献しています。
*ぺタグはドイツ・ハンブルグの商社によってタブリーズの旧市街に開かれた工房ですが、古典絨毯の復興・継承と言うヴィジョンの下アルメニア系の職人達によって生産されました。品質・芸術性の高さは現在の取引金額に現れています。
