手織り,ペルシャ,絨毯,鍋島,赤穂,堺段通,ギャッベ,イラン

日本製手織り段通
日本でも手織り絨毯の製造が盛んに行われていた時期が有ります。江戸時代後期より現在の佐賀県の鍋島、播州赤穂、そして泉州堺の手織り段通です。日本の高温多湿の夏に適した綿素材を使うことが多く明治大正期に隆盛を迎え盛んに欧米にも輸出されていました。手織り絨毯の価格はその製造国の物価と人件費によって決まりますので今日でもその技術は伝承され続けておりますが輸入手織り絨毯と比べるととても少ない生産量になっております。その技術は元々は中国段通、その先はシルクロードを経て中国にやって来たペルシャ絨毯に有ります。これは日本の手織り絨毯の歴史においてとても重要な事実です。

祇園祭の山鉾飾り絨毯
遡って数百年日本にも南蛮船がやって来る頃手織り絨毯も初めてやって来ました。そんな絨毯が、その後京祇園祭の山鉾の珍しい貴重な飾り物として使われました。手織り絨毯は100年使える程丈夫ですとは言いますが、流石に土足で使う西洋には500年物の絨毯は傷んでいるものばかりで祇園祭山鉾飾り絨毯は非常に貴重な品である様です（以前ＮＨＫのドキュメンタリーで見ましたのでその後祇園祭にちょっと寄って見たのですが、残念ながら見れませんでした。）。

1867年パリ万博～
サファビー朝後に衰退したペルシャ絨毯ですが、１８６7年パリ万博に出展されると忽ち評判になり欧州諸国のＶＩＰ達のオリエンタルブームに乗り一気に広まって行ったようです。１８７３年のウィーン万博出展が更に拍車をかけて絨毯と言えばペルシャと言う不動の地位を冠した様です。日本も明治期には欧米との交流も増え建築様式も輸入されるようになりペルシャ絨毯の存在も認識されるようになりましたが、まだまだ一般の人々には手の届かぬ贅沢品でありました。この時代には先の日本製段通が、重宝されたようです。勿論多くは日本様式の住宅で使われて居りました。

1980年頃～
1980年代日本の経済は製造業の輸出に引張られて絶頂期に有りました。国内は土地や株、ゴルフ会員権などが異常に高騰し、多くの人々は中流意識を持ち始め海外旅行に行くようになり欧米スタイルのホテルに宿泊して高級ウイスキーやイタリア・フランス製のブランド品などのショッピングを謳歌しました。
1980年頃、国際線に搭乗するにあたって＜コーヒー　オア　ティー＞＜フィッシュ　オア　ビーフ＞と添乗員さんに聞かれますとか椅子をリクライニングするときは後部座席の人に＜メーアイ　リクライン　マイシート＞と声を掛けて下さいとか書かれた搭乗の手引きが配られたものです。
又、ハーバード大学の先生が、この頃【ジャパン　アズ　ナンバーワン】なるベストセラーを出し多くの日本人は永遠に豊かになると錯覚していました。
（為替はＵＳＤに対して220円～230円当たりだった。）
今では考えられませんが、そんな時代です。

1985年プラザ合意後
そして日本が日米経済戦争に勝利してしまった結果受け入れることになった１９８５年のプラザ合意が結ばれると円高はどんどん進み海外生産・輸入輸入と叫ばれる時代が、やってきます。日本人は旅館からホテルに泊まるようになり、生活スタイルも換え、住宅スタイルも和洋折衷の時代からより欧米スタイルへ換えていきます。
そしてこの頃日本の好景気に誘われてトルコ・パキスタン・インド・イランなど手織り絨毯製造主要国の人々が（ジャパン　ドリーム）を求めて大勢やって参ります。

このようにあらゆる手織り絨毯輸入の好条件が揃って日本の手織り絨毯市場は一変します。
（日本の好景気‣住宅スタイルの西洋化・絨毯製造国の人々の来日・円高）

日中国交回復以来政府の後押しも有り日本で人気の有った中国段通に加えトルコ・パキスタン・インド・ペルシャ・アフガンなど様々な手織り絨毯が1990年代に向けて倍々ゲームのように輸入されました。某有名企業の会長さんがウン仟萬円のコムの絨毯をとか某横綱がウン仟何百萬円の絨毯を・・・などと言う景気の良い話が聞こえてきたのもこの頃でした。

バブル経済の終焉～現在
その後バブル経済も終わりを告げ円高の下、日本はデフレデフレの早い安いの食べ物に100円ショップ・ニトリ・ユニクロで衣食住を賄う時代になり当然高級手織り絨毯の輸入量も縮小しますが、より欧米化した住宅スタイルに合致してカジュアルで価格もより安価なイランの遊牧民にルーツを持つギャッベ絨毯やトライバル絨毯（部族絨毯）と呼ばれるバルーチ族の絨毯などが人気を集めるようになりました。近年ではモロッコのベニワレンに代表される北アフリカのベルベル人の絨毯なども輸入されるようになって居ります。