ネパール製チベット絨毯・チベタン

手織り絨毯

以前、大田区で絨毯を販売している時にネパールの出身の方が絨毯を懐かしく思いお店に入って来られました。実家がカトマンズの絨毯工場で現在は弟さんがチベット人の奥さんと経営しているという事で色々とネパールの絨毯事情について教えて下さった事が有りました。
又、10年程前にネパールに経済協力の仕事で20~30年間在住していらした静岡出身の方が日本に帰国後に絨毯用手機織機の販売とチベット絨毯織りの先生をなさっており1泊2日で絨毯織りを即席で教えてもらったことが有りました。手織り絨毯は織るのは勿論根気を要する仕事ですが、手機に糸を張り込む(成形)だけでもとても大変なことでした。
チベタンは1990年代から日本でも販売されているのを見ていますが、チベット絨毯についての深い知識は無いのですが、以前から存在を知っているだけで特に興味がなかった〈チベタンタイガーラグ〉や〈チベタンドラゴンラグ〉が人気で良く売れているという話を知り合いのネパール製品輸入商の方より最近聞いたりしたので少し調べて纏めてみます。チベタンタイガーラグには人気が有るとありがちな機械織りやレーヨン(ビスコース)製?シルクの偽製品が既に出回っているのだそうです。
現在、日本に入って来ている<チベタン>と呼ばれる製品は全てネパール製です。中国共産党のチベット侵攻でネパールに逃げた人々によってもたらされたチベット手織り絨毯技術がネパールに根付いて居りチベットをルーツとするネパール製絨毯をそのように呼んでいるようです。
勿論本家のチベット絨毯は
チベットで作られていますが、日本に持って来ても商売としては中々難しそうとのお話でした。殆どヨーロッパなどに輸出されネパール製チベタンに対して<ラサズ>と呼ばれるようです。現在、原産地は中国になります。1950年以前に作られたオールドの素晴らしいチベット絨毯は貴重な物となっています。


チベット絨毯<ラサズ>もネパール製<チベタン>も他の地域の手織り絨毯と違いパイルを結んでは鉄の芯棒に巻き付けながら織り進めるのが特徴的です。パイルが鉄の芯棒に一杯になると芯棒を半割りするかの様な位置でパイルを切り分けていくとパイルが芝生の様に切り立って行くと言う寸法です。トルコ結びやペルシャ結びと違ってパイルをカットしたゴミが殆ど出ないので材料を無駄にしない検約精神が産み出した技術でしょう。

tibet saddle pad 1900 130×66㎝

55-Tibet-Tiger-Rug

-Tiger-rug-180×180-chibet

Tibet-Jabuyechibet

 

 

 

<ラサズ>Lhasas-中国チベット自治区の絨毯
チベット高原は標高4000m級の広大な地域で古代よりチベット族やら沢山の遊牧民が暮らす地域でした。チベット国と聞くとラサ(神の地)に鎮座するポタラ宮(ダライラマ・チベット仏教)を中心とする小国と思いがちですが、7世紀~9世紀半ばのチベット人によるチベット高原の統一国家・吐蕃(トバン)王国の時代には現在の日本の7倍近い面積を持つ中央アジアの大国であり現在の中国の四川や雲南までもがその支配下に及んでいた様で驚きました。しかしその後13世紀半ばにはモンゴル帝国に侵攻・支配(施主・帰依処関係と言う特殊な形で)され、そして18世紀には清朝(満人)の藩部となった歴史が有ります。そして遂に20世紀半ば以降にはチベット全土の半分程の地域だけが中国の自治区として留まっているだけの現状です。チベットは文字にしても仏教にしてもインドからの影響が大きかった様ですが、そのチベット仏教を通じてモンゴルやネパールに影響力を持っていたようです。
チベット全土は250万平方キロメートル(その内半分に当たる120万平方キロメートル程が現在のチベット自治区)と言う途方もない広さですが中西部のウ・ツアン地区、東南部カム地域、東北部のアムド地域の3つの地域に分けられます。手織り絨毯は各地域で作られていますが、国策でチベット高原の東・カム地域に位置する牧畜地帯の青海省のチベット自治区に地毯工場が出来て手結び・手織り絨毯やガンフックによるウール絨毯も作られて各国に輸出されているようです。このチベット高原の東の青海省は標高も3500m級と高く良質のウールの産地で有名ですが、更に3000年以上は続く手織り絨毯の歴史があることが、塔里他里哈遺跡の出土品の中にあった大量の糸紡ぎ用の道具(ハンドスピンドル)チベット系羊の毛糸・織物片が約紀元前10世紀頃の物である事から証明されています。大体この地域に石斧に代表される旧石器文化が起こったのは世界最古級の13万年~14万年前であるという古代より人々の活躍が見られる地域である事も判って居りチベット絨毯は世界最古と主張する人も居ります。
中国の実効支配前の古いチベット絨毯を見ると仏教的なデザインや花柄・動植物や幾何学模様と種々様々であり色柄に富んだ絨毯であった様です。又、サイズは一般家庭やお寺での使用が多く日本で言う1畳程(約90x180cm)の物が多く鍋島緞通みたいなイメージです。

<チベタン>Tibetan-ネパール絨毯
日本に主に輸入されて良く見かけるのはネパール製チベット絨毯・チベタンの方ですが、私の中ではチベタン絨毯と言うと孫悟空の雲か蓮の花か先の犬の様に伏せをしたタイガー・龍などのイメージでしたが、近年はどんどんシンプルモダンなタイプも作られているようです。比較的厚みが有り、多くは柄を浮き立たせるカービングと言う中国段通と一緒の技法を用いるのが特徴です。柄のエッジ部分のパイルをカットして凹凸を加えて柄を浮き立たせます。
又、デザインを持ち込んでネパールで織って貰うオーダーメイドも盛んである様です。
ネパール絨毯に与えたチベット絨毯の影響は大きく現在はチベット難民地区に工場が建てられて数百人単位の人々がいつも手紡ぎ・手結びのチベタンを織っていてネパールの主要輸出産品に成長している様です。

毯子・地毯・絨毯・絨緞・緞通と中国や日本の先人は本当にうまく漢字を当て嵌めると感心してしまいます。

お使いください手織り絨毯
フロムギャッベ

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