手織り絨毯は俗に言う「使ってナンボ!」の世界かなと思います。
と言いますのも10年ほど前に吉祥寺の家具屋さんの閉店セールを手伝って販売した手織り絨毯ギャッベのパルディサイズを杉並区へお届けに行った事があります。面白いお客様で一度接客すると「サイズを測って又来ます」と言い残して帰られましたが、数日して「本当に来たでしょ~ 普通は又来るって言ってもう大体来ないでしょ~」と真面目そうな出で立ちによらず冗談めかした事を言いながらご注文下さったのを覚えています。届けに行くと驚いたことに今までソファの下まで敷き込んでいた大きなアンティークペルシャを飽きたのでお持ちしたギャッベに交換するとの事です。思わず「良いのですか?こちらの方がギャッベより10倍~も高価な品ですけれども」と言ってしまいましたが、「さんざん使ったので飽きてしまいました!」と。ご年配のお客様のご両親が、昔イギリスから持ち帰ったのだそうです。その後あの絨毯はどうなったのか?ちょっと気になります。
対して高価な物と思い大事にしていた物がお土産品程度の無価値なものである事は良くあります。と言うかほとんどそうです。
先日も電話でシルクのペルシャ絨毯を見て貰えないかと言う話が有りましたので見に行きました。綺麗にナフタリンを入れて丸めて大事にしまっていた品の包みを開けてみると色が少し滲んだ5年や10年は使ったようなザロニムサイズの絨毯です。ミフラブに鳥や花と言ったデザインです。良く見るとやっぱりペルシャ旅行のお土産品みたいな物です。いつものパターンです。『うちでは再販が出来そうも無い品なので買取りはできません』とお断りして帰りましたが、どこでどういう理由で入手したのかは判りませんし、なぜこういう勘違いが起こっているのかも良く判りませんが、氷山の一角かと思います。翌日何でも買い取る業者さんが来る事になっているとの事でしたが、どうなったのか?
現在百貨店の店頭などで沢山の半機械・半手織りなるペルシャ絨毯ぶりっ子が売られたり、ネットオークションなどではトルコ・アフガニスタン・パキスタン・中国・インドなどの絨毯が、ペルシャ絨毯として売られていることが有ります。10年、20年、30年後にはこのような勘違いは確実にもっと増えるかと思います。
絨毯は本来、床の無いテントの中で快適に暮らすために遊牧民が発明した道具ですので使って楽しまないと損してしまいます。手織り絨毯の価値は使って初めて生まれるものですので「使ってナンボ!」の世界かと思います。
最たる勘違いとして世界に名立たるオークションハウスでもアンティークペルシャ絨毯として中国製絨毯が出品されてしまったことが有るという記事を読んだことが有ります。
お使いください!!手織り絨毯
フロムギャッベ
*オークションハウスと言えば東北の老舗百貨店の絨毯売り場のバイヤーから『ギャッベ絨毯は50年使っても大丈夫と言う事をお客さんに説明する為に古いギャッベが欲しいという要望が有りまして、30年くらい前・1990年代半ばにドイツの地方のオークシャンハウスで30年~50年程経年して傷んだギャッベを20~30枚程落札して卸し売りしたことが有ります。とても評判が良かった様です。その当時日本ではまだまだギャッベは珍しい時代でしたが、あの頃ドイツには使い古されたギャッベがゴロゴロしていたという事でしょうね、、、、? まだドイツマルクの時代でした。2002年から通貨統合されてユーロが使われ始めました。リラ・マルク・フラン・ドラクマなんてなんか響きが良かったな~と思ってしまいます。