ムガール帝国から続くインド絨毯

手織り絨毯

現在のインド絨毯と言うと欧米からの注文で、ペルシャ絨毯・カザック絨毯やギャッベなどのコピー品を安価で作る価格勝負の絨毯の側面が強くなっていますが、かつてはムガール帝国の宮廷絨毯として1600年代には独自性も打ち出していた名だたる時代が有りましたので現在の状況は少し残念な気がします。最も商業的には大量の輸出をしているので大成功と思います。物価や人件費が手織り絨毯価格の大きな要因でありますので、現在インド絨毯はイランの物と比べると3分の1程の安価で消費者が入手できるのは立派な存在意義があるとは思いますが、、、です。

*以下美術館(V&A/The metのウェブサイトより)に有るイスファハンの血を引くムガール帝国時代の絨毯の3点です。

              フレムリン絨毯 ムガール    1640年V&A所蔵

                               パシュミナウールパイルのムガル絨毯                              蔦と花 1650頃  The Met 所蔵

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Carpet with Palm Trees, Ibexes, and Birds, Cotton (warp and weft), wool (pile); asymmetrically knotted pile

印象的なヤシの木に鳥や躍動する動物達の図柄 ムガール ラホール 1500年後期~1600年 アクバル大帝時代

Carpet with Scrolling Vines and Blossoms | The Metropolitan Museum of Art (metmuseum.org)

Carpet with Palm Trees, Ibexes, and Birds | The Metropolitan Museum of Art (metmuseum.org)

ムガール帝国とは現在のパキスタン・北インドを中心に栄えた南アジアのイスラム大帝国なのですが、1526年に現在のウズベキスタン出身のティムール帝国の王族バーブルによって建国されその孫で13歳で即位した第3代アクバル大帝(在位:1556~1605年)・タージマハルを作った第5代シャー・ジャハーンを経て第6代アウラングゼーブ(在位:1658~1707)時代に最大となりその崩御とともに息子たちの帝位争いから急激に衰退・分裂しイランやアフガニスタンの侵攻にも会いイギリスなど西欧の植民地化を目指す外国勢も著しくなり次第に力を失った歴史を持ちます。西はインダス川・北西はアフガニスタン・北はカシミール・東はバングラデシュをも支配しました。
インドの絨毯製造の歴史は第3代皇帝であるアクバル大帝がイスファハンから絨毯技術者を招聘しラホール(現在はパキスタン)、アグラ(ファテープル・シークリー・勝利の都)に絨毯工房を設立したのが始まりです。
アクバル大帝と言えば帝国の維持・拡大の為に周辺国との抗争に明け暮れたイメージですが、ムガール細密画とムガール絨毯と言う文化も育てた功績があります。
ムガール絨毯はイスファハン・ペルシャ絨毯の踏襲から始まりますがその後独自色を打ち出すようになり英国・東インド会社時代の1650年代半ばには現在各国の博物館に入るようなムガール絨毯が確立しムガール帝国の宮殿に敷き詰められました。
時は経ち第2次世界大戦後の1947年に他のアジア諸国と同じように植民地から解放される事となりイギリス領インド帝国は解体されてインドは分離独立を果たしますが、これを持ってムガール絨毯もパキスタン絨毯インド絨毯と言う分離独立をする事となりました。この時ムスリムと呼ばれるイスラム系の織り手の多くはパキスタン側に移って行きました。
分離独立から70年以上も経った現在ムガールにルーツを持つインドとパキスタン絨毯はそれぞれ独自の道を歩んでいますが、カシミール絨毯の行方も気になります。

インドではギャッベ風絨毯が現在最も活発な様ですが、その他ペルシャンサルークのミールmir柄絨毯(小さな松かさ・ボテがフィールド全体を埋め尽くしているデザイン)やカザック調絨毯などが価格重視のデザインコピー絨毯として作られています。
現在のインド絨毯はラジャスターン・ジャイプールやバラナシ―・バドイで多く作られて居りますが、縦糸はまず綿糸を使っています(時折ウールも有ります)。気温が高いインドでは国内で良質の柔らかいウールが調達し難いので良い絨毯はアルゼンチン・ニュージーランド・オーストラリアなどからのウールを使用したり・mixしたりしています。より安価な物には国内産ウールを使っているようです。
織りはハンドノットの手織りとハンドルームと呼ばれるインド独特の機織りで織られたものが有ります。ハンドルームは手織りの数倍の織りスピードが有りますので折り目は細かく一見手の込んだ品の様に見えますが、ハンドノット程の丈夫さを有していません。

又、パキスタンとの領土争いの火種となるカシミール・シュリナガルの上質なシルクの絨毯も有名です。

パキスタン・ラホールではブハラbucharaと言う特徴的な幾何学的デザインの絨毯が有名でかつて日本でも一世を風靡しました。通常はシングルノットの柔らかい織りですが、ダブルノットで織ったメダリオンを持つペルシャ風草花紋様なども作られています。又、インドと同じくカザックデザインの絨毯も作られていますが、こちらはずっと上質の織りとストーンウォッシュ加工による仕上げがされて居りアフガニスタンのカザックデザイン絨毯とともに魅力的な絨毯です。

パキスタン 201×302㎝ ¥480,000

*ロッキーの階段で有名なフィラデルフィア美術館にもムガール帝国時代のインド絨毯が収蔵されています。他にもフィラデルフィア美術館には仏サボネリーやエジプト/マムルーク、ペルシャ、アナトリア絨毯なども収蔵されているようでフィラデルフィア美術館ウェブサイトのコレクション検索にcarpetsと入れると色々見る事が出来ました。

下記はIndian carpetsIndian rugと入れて検索しました。ご覧ください。

Search: indian carpet (philamuseum.org)
Search: indian rug (philamuseum.org)

*今でもロッキー・バルボアが住んでいるような気がする町・イヤ!!きっと住んでいる町フィラデルフィアです。

お使いください!!手織り絨毯
フロムギャッベ

 

 

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