アンティーク・ペルシャ絨毯 天文学的数字で落札。

手織り絨毯

10年程前にオークションハウスにおいて天文学的数字で落札されてニュースになったのが17世紀のペルシャ・ケルマンの絨毯パテック・フィリップ社1932年製造の超複雑機能付き懐中時計です。絨毯は何と32億円(¥3、200、000、000)、、、、懐中時計は26億円(¥2、600、000、000)の落札額です。
この驚きの金額も大谷選手の大リーグの年俸を聞くと霞んでしまいますが、当時はどちらもペルシャ絨毯・パテック・フィリップと言う雲上ブランドコレクターズアイテムと言えども、、、本当に驚きの金額でした。

絨毯の方は銀行家ウイリアム・クラーク氏所蔵の「サイクル・リーフ柄絨毯」で、その名の通り、カマキリが鎌を振り上げたような大きな葉っぱ(サイクル・リーフ)のデザインが印象的な絨毯です。ペルシャ絨毯にとっての最盛期サファビー朝宮廷絨毯時代の作品で当時カシャンと双璧を成すケルマンで織られた物で素晴らしい事は判りますが、それまでの同年代の世界の博物館級のアンティークペルシャ絨毯でも取引価格が10億円を超えるなんて聞いたことも有りませんでした。ペルシャ絨毯も工芸品の一つですので国の興亡によって隆盛期・衰退期が有りますが、タハマスプ1世(在位1524~1576)~アッバス大王(在位1588~1629)の築いたサファビー朝の黄金時代16世紀から17世紀が最もペルシャ絨毯にとっても素晴らしい時代であった様です。今日、博物館・美術館に収蔵されて広告塔の様なアンティーク・ペルシャ絨毯は皆このサファビー朝時代に製作されたものですが、殆どイランから国外(欧米)に流出しているようです。このサファビー朝・宮廷絨毯時代にイスファハン・カシャン・ケルマンにて製作された絨毯にはアルデビル絨毯・チェルシー絨毯・戴冠式絨毯・ポルトガル絨毯・花瓶文様(ゴルダニ)絨毯・ポロネーゼ(ポーランド)絨毯・サングスコー絨毯など名立たる物が有ります。この中にはイギリス・ドイツ・オーストリア・米国などの博物館に所蔵されている物も多く実際に目で見ることも可能です。日本でも滋賀県の美術館にてサングスコー絨毯の傑作を見ることが出来ます。特に英国ビクトリア&アルバート美術館にはウイリアム・モリスが所持していた花瓶文様絨毯やアルデビル絨毯・チェルシー絨毯など名作が数多く所蔵されています。
ペルシャ絨毯の世界では100年経ってもアンティークの入り口にやっとたどり着いた程度なのかもしれません。

*2013年にオークション・サザビーズで32億円で落札されたクラーク氏のサイクルリーフ絨毯は1600年代の赤色でケルマンで織られた物のようですが、現在、落札者が個人で有る為、どこにあるのかも判明していません。ザンジャンで織った鎌状の葉デザインの絨毯が有りましたのでご覧ください。

ザンジャン ウール

参考:
Victoria and Albert Museum 12

アルデビル絨毯 英ビクトリア&アルバート美術館収蔵品

上記:英ビクトリア&アルバート美術館のホームページを見ると新旧沢山の名だたるカーペットが収蔵されています。
一方懐中時計経年80年は懐中時計としてそんなに古くないものなのですが、その素性(ニューヨークの銀行家ヘンリー・グレーブス・ジュニアパテック・フィリップス社に注文製作させた)と機械式時計技術の粋を極めた3つの複雑な機能を詰め込んで居るという(グランドコンプリケーションウォッチ)点が高額になった理由の様ですね。小さな時計の中に三つの複雑機能を詰め込むのは凄い事なのですね
その後1970年前後に市販されてコレクターからポールニューマンモデルと呼ばれるロレックスデイトナが億で落札される事を思えば世界にたった一つのパテックのグランドコンプリケーション時計の26億円は天文学的数字とは言えないかもしれませんね。(*ポールニューマンモデルの価格の推移:1980年頃には35万円で、1990年頃より高騰を始めて2000年頃にはまだ400万円程度で買えたものが、2010年頃には1千万円になり、近年は更に億と言う異常な高騰をしております。2017年にはニューヨークのオークションに出品された裏蓋に“Drive Carefully Me”と刻まれた奥さんからポールニューマンさんへ贈られた実機1968年製が腕時計としての最高落札額1775万USドルを記録しました。)

ケルマン絨毯とパテック懐中のどちらも恐る恐ると触ってみたいものです。
いや見るだけでも、、、、。

お使いください!!手織り絨毯
フロムギャッベ

*パテックのヘンリー・グレーブス懐中時計の三つのコンプリケーション機能とはパーぺチュアル・カレンダー/ミニッツ・リピーター/クロノグラフの事で18金ケースです。
*正式名称ロレックス・コスモグラフデイトナはクロノグラフ機能が付いています。イギリスの貿易商出身で販売上手のロレックス社は1970年頃まで同じモデルの時計でも文字盤デザインを沢山用意してバリエーションを豊富にしました。その結果同じモデルでも製作数が少なくてしかも人気のある通称ポールニューマンモデル・エキゾチックダイアルなるマニア垂涎の時計が生まれて高額になっているようです。そのダイアルデザインの希少性から過去にもアンディー・ウォーホールのコレクションがきっかけでマニア垂涎の的となり高騰した通称バブルバック・ユニークダイアルと言う例があります。

参照:

ロレックス ポール・ニューマンデイトナを実機レビュー (hodinkee.jp)

上記のhondinkee.jpで2017年に1,775万USドルで落札された今や伝説の腕時計となったポール・ニューマン・エキゾチックダイヤルの実機を見る事が出来ます。

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